運動効果と時間

脂肪燃焼

これまで、脂肪を効果的に燃焼させるには、20分以上の連続した運動が必要と勧められていましたが、脂肪燃焼は運動後20分から急に始まるものではありません。
8~10分程度の短時間のウォーキングでも脂肪がエネルギー源として利用されることから、こま切れの運動でも積み上げていくことが大切です。

こま切れの運動

1日30分の運動=10分の運動×3回

両者の減量効果に差のないことが認められています。
つまり同じ運動であれば、その効果は総運動時間に対応するといえます。

高血圧症の運動

高血圧症とは

全国の調査結果において、高血圧患者は約3,450万人にのぼると推計されます。

この高血圧症の要因としては、食生活の乱れ・運動不足・喫煙・ストレスといった生活習慣が密接に関連しています。

治療の基本は生活習慣の改善(運動療法・食事療法)と薬物治療があります。
運動療法として、運動の頻度は定期的に(できれば毎日)実施し、運動量は30分以上、強度は中等度(ややきつい)の有酸素運動が一般的に勧められています。運動療法により降圧効果が得られ、高血圧症が改善されます。

運動療法の降圧効果

高血圧患者において習慣的な有酸素運動は、収縮期血圧を8.3mmHg低下、拡張期血圧を5.2mmHg低下させる効果があります。

運動療法の適応者

運動療法はⅡ度高血圧以下(収縮期血圧<180または拡張期血圧<110mmHg)の血圧値で脳心血管病のない高血圧患者が適応となります。

Ⅲ度高血圧(収縮期血圧≧180または拡張期血圧≧110mmHg)を超える場合には降圧後に実施することとなっています。

運動種目

ウォーキング(速歩)・ステップ運動・スロージョギング・ランニングなどの有酸素運動

運動強度

定期的に(できれば毎日30分以上)運動を行います。

運動頻度・時間

低・中強度の運動は収縮期血圧の上昇はわずかであるのに対して、高強度の運動は血圧上昇が著明であるため、自覚的運動強度として、中等度「ややきつい」と感じる程度の運動強度が推奨されています。

掃除・洗車・子供と遊ぶ・自転車で買い物に行くなどの生活活動の中で身体活動量を増やすことからはじめることも重要です。
例えば1回の運動時間を長く設定し1週間の運動回数を減らすか、運動強度を低く設定し1週間の運動回数を増やすなどの設定を個人に合わせて考えることができます。

糖尿病の運動

糖尿病とは

全国の調査結果において糖尿病患者は約1,900万人にのぼると推計されます。

糖尿病の治療には、運動療法・食事療法・薬物療法の3本柱があります。
運動療法により血糖コントロール・インスリン抵抗性・脂質代謝の改善が得られ、糖尿病を改善します。

運動療法の目標として、運動の頻度は週に150分かそれ以上、週に3回以上、運動強度は中等度(ややきつい)の全身を使った有酸素運動、運動持続時間は30分以上行うことが一般的に勧められています。
また、連続しない日程で週に2~3回のレジスタンス運動の両方を行うことが勧められています。

糖尿病治療の基本として、「血糖値250~300mg/dL程度、HbA1c<9.0%」の場合、食事療法と運動療法を行い、2~3カ月間程度継続しても、目標の血糖値を達成できない場合には薬物療法を行う、とされています。

運動療法の適応者

運動を実施する上での注意点としては、血糖がコントロールされていない1型糖尿病患者、空腹時血糖250mg/dL以上または尿ケトン体陽性者では、運動中に高血糖になることがありますので注意しましょう。
また逆に、インスリンや経口血糖降下薬(特にスルホニル尿素薬)で治療を行っている方の場合は低血糖になりやすいため、運動量の多い場合には、補食をとる、あるいは、運動前後のインスリン量を減らすなどの注意が必要です。

運動種目

糖尿病を改善させる運動として、有酸素運動とレジスタンス運動の併用が推奨されます。

有酸素運動により、内臓の脂肪細胞が小さくなることで肥満を改善し、インスリンの働きを妨害する物質の分泌が少なくなります。
このため筋肉や肝臓の糖の処理能力が改善し、血糖値が安定します。またレジスタンス運動は、筋量の増加が糖の処理能力を改善させるため、血糖コントロールに有効です。

また、有酸素運動とレジスタンス運動の併用はそれぞれの運動単独よりも効果的に糖尿病を改善させることも報告されています。

運動強度

最初は階段を使う、歩行時間を増やすなどから始め、好みにあった運動を取り入れるなど段階的に運動を加え、安全かつ運動の楽しさを実感できるように工夫していくことが運動を継続するために重要なポイントとなります。

有酸素運動では、一般に中等度の強度の有酸素運動(運動時心拍数が50歳未満で100-120拍/分、50歳以降で100拍/分以内)を行うことが勧められています。
ただし、不整脈などで心拍数を指標にできない場合、自覚的運動強度として、「ややきつい」または「楽である」を目安とします。
中等度の運動強度としては、早歩きのウォーキング、ヨガ、軽いレジスタンス運動など。

運動頻度・時間

糖質と脂肪酸を効率よく代謝するために30分以上の持続が望ましいとされています。
運動を実施するタイミングは、生活の中で実施可能な時間であればいつ行っても問題ないが、特に食後1時間後に行うと食後の高血糖状態が改善されます

有酸素運動では、中等度の運動強度であれば、週に150分かそれ以上、週に3回以上、行うことが勧められています。
糖尿病患者の糖代謝の改善は運動後12~72時間持続することから、血糖値を低下改善させるため、運動をしない日を2日間以上続かないように行う必要があります。
また、歩行運動の場合、1日8,000~10,000歩を目安としましょう。

レジスタンス運動では、連続しない日程で週に2~3回の実施が勧めらています。
ただし、心疾患がある患者では高強度のレジスタンス運動の実施は勧められません。

脂質異常症の運動

脂質異常症とは

全国調査結果において、脂質異常症の患者は約2,200万人と推計されています。

脂質異常症の基準は、LDLコレステロール≧140mg/dL、HDLコレステロール<40mg/dL、中性脂肪≧150mg/dL、non-HDLコレステロール≧170mg/dLと定義されています。

脂質異常症の治療は、生活習慣の改善が根幹であり、薬物療法中も生活習慣の改善を行うべきとされています。
運動療法として、中強度以上の有酸素運動を中心に定期的に(毎日合計30分以上を目標に)行うことが推奨されています。

運動種目

有酸素運動を中心とした種目として、ウォーキング、速歩、水泳、エアロビクスダンス、スロージョギング(歩くような速さのジョギング)、サイクリング、ベンチステップ運動などの大きな筋をダイナミックに動かす身体活動が推奨されています。

運動強度

中強度以上の運動が推奨されています。
掃除、洗車、子どもと遊ぶ、自転車で買い物に行くなどの生活活動の中で活動量を増やすことからはじめてもよいでしょう。

運動頻度・時間

1日の合計30分以上の運動を毎日続けることが望ましいです(少なくとも週3日は実施)。

血中脂質レベルは1回の運動では影響を受けません。
そのため血中脂質レベルに好影響を与えるには数ヶ月以上の長期的な運動療法が必要となります。

HDLは「善玉コレステロール」として知られ、脂質異常症の進展を抑制する働きがあります。
HDLコレステロールを増加させることができる運動の最低条件として、1週間に合計120分間の運動を行わなければならないこともわかっています。