生活習慣病とは

食事・運動・休養・喫煙・飲酒などの生活習慣が、その発症や進行に関与する病気のことを指します。

全身の動脈硬化が起こり、心筋梗塞/狭心症、脳卒中(脳出血、脳梗塞、くも膜下出血)を引き起こすことが知られています。

代表的な生活習慣病

  • 高血圧症
  • 糖尿病
  • 脂質異常症
  • 肥満症
  • 脂肪肝
  • アルコール性
    肝障害
  • 高尿酸血症/痛風
  • 慢性腎臓病
  • 心筋梗塞/狭心症
  • 慢性閉塞性肺疾患
  • 大腸癌、肺癌
  • 脳卒中

動脈硬化と生活習慣病の関係

「動脈硬化」とは、動脈の壁にコレステロールがたまり、硬くなったり狭くなったりして血液の流れが悪くなる状態です。

生活習慣病は、動脈硬化を進めてしまうことが分かっています。

自覚症状がほとんどないため、気づかないうちに動脈硬化が進行し、脳や心臓、血管などにダメージを与えていきます。
その結果、ある日突然、狭心症や心筋梗塞、脳卒中などを引き起こすことがあります。

そのため、自覚症状がなくてもこれら生活習慣病を治療することはとても大切です。

運動による生活習慣病改善

有酸素運動とレジスタンス運動

  • 有酸素運動
    ウォーキング(速歩)・ジョギング・水泳などの大きな筋を使用する運動。全身運動。
  • レジスタンス運動
    腹筋、ダンベル、腕立て伏せ、スクワットなどのおもりや抵抗負荷に対して動作を行う運動。
  • 水中運動
    有酸素運動およびレジスタンス運動の両方が行える運動種目であり、膝への負担が少なく、肥満・糖尿病患者には安全かつ効果的。
  • バランス運動
    高齢の場合、バランス能力(静止姿勢や動的動作中の姿勢を維持できる、また不安定な姿勢から回復させる能力)を向上させるバランス運動も有用。バランス運動としては片足立位保持、ステップ練習、体幹バランス運動などがあります。

高血圧症の運動療法

高血圧症とは

全国の調査結果において、高血圧患者は約3,450万人にのぼると推計されます。

この高血圧症の要因としては、食生活の乱れ・運動不足・喫煙・ストレスといった生活習慣が密接に関連しています。

治療の基本は生活習慣の改善(運動療法・食事療法)と薬物治療があります。
運動療法として、運動の頻度は定期的に(できれば毎日)実施し、運動量は30分以上、強度は中等度(ややきつい)の有酸素運動が一般的に勧められています。運動療法により降圧効果が得られ、高血圧症が改善されます。

運動療法の降圧効果

高血圧患者において習慣的な有酸素運動は、収縮期血圧を8.3mmHg低下、拡張期血圧を5.2mmHg低下させる効果があります。

運動療法の適応者

運動療法はⅡ度高血圧以下(収縮期血圧<180または拡張期血圧<110mmHg)の血圧値で脳心血管病のない高血圧患者が適応となります。

Ⅲ度高血圧(収縮期血圧≧180または拡張期血圧≧110mmHg)を超える場合には降圧後に実施することとなっています。

運動種目

ウォーキング(速歩)・ステップ運動・スロージョギング・ランニングなどの有酸素運動

運動強度

定期的に(できれば毎日30分以上)運動を行います。

運動頻度・時間

低・中強度の運動は収縮期血圧の上昇はわずかであるのに対して、高強度の運動は血圧上昇が著明であるため、自覚的運動強度として、中等度「ややきつい」と感じる程度の運動強度が推奨されています。

掃除・洗車・子供と遊ぶ・自転車で買い物に行くなどの生活活動の中で身体活動量を増やすことからはじめることも重要です。
例えば1回の運動時間を長く設定し1週間の運動回数を減らすか、運動強度を低く設定し1週間の運動回数を増やすなどの設定を個人に合わせて考えることができます。

糖尿病の運動療法

糖尿病とは

全国の調査結果において糖尿病患者は約1,900万人にのぼると推計されます。

糖尿病の治療には、運動療法・食事療法・薬物療法の3本柱があります。
運動療法により血糖コントロール・インスリン抵抗性・脂質代謝の改善が得られ、糖尿病を改善します。

運動療法の目標として、運動の頻度は週に150分かそれ以上、週に3回以上、運動強度は中等度(ややきつい)の全身を使った有酸素運動、運動持続時間は30分以上行うことが一般的に勧められています。
また、連続しない日程で週に2~3回のレジスタンス運動の両方を行うことが勧められています。

糖尿病治療の基本として、「血糖値250~300mg/dL程度、HbA1c<9.0%」の場合、食事療法と運動療法を行い、2~3カ月間程度継続しても、目標の血糖値を達成できない場合には薬物療法を行う、とされています。

運動療法の適応者

運動を実施する上での注意点としては、血糖がコントロールされていない1型糖尿病患者、空腹時血糖250mg/dL以上または尿ケトン体陽性者では、運動中に高血糖になることがありますので注意しましょう。
また逆に、インスリンや経口血糖降下薬(特にスルホニル尿素薬)で治療を行っている方の場合は低血糖になりやすいため、運動量の多い場合には、補食をとる、あるいは、運動前後のインスリン量を減らすなどの注意が必要です。

運動種目

糖尿病を改善させる運動として、有酸素運動とレジスタンス運動の併用が推奨されます。

有酸素運動により、内臓の脂肪細胞が小さくなることで肥満を改善し、インスリンの働きを妨害する物質の分泌が少なくなります。
このため筋肉や肝臓の糖の処理能力が改善し、血糖値が安定します。またレジスタンス運動は、筋量の増加が糖の処理能力を改善させるため、血糖コントロールに有効です。

また、有酸素運動とレジスタンス運動の併用はそれぞれの運動単独よりも効果的に糖尿病を改善させることも報告されています。

運動強度

最初は階段を使う、歩行時間を増やすなどから始め、好みにあった運動を取り入れるなど段階的に運動を加え、安全かつ運動の楽しさを実感できるように工夫していくことが運動を継続するために重要なポイントとなります。

有酸素運動では、一般に中等度の強度の有酸素運動(運動時心拍数が50歳未満で100-120拍/分、50歳以降で100拍/分以内)を行うことが勧められています。
ただし、不整脈などで心拍数を指標にできない場合、自覚的運動強度として、「ややきつい」または「楽である」を目安とします。
中等度の運動強度としては、早歩きのウォーキング、ヨガ、軽いレジスタンス運動など。

運動頻度・時間

糖質と脂肪酸を効率よく代謝するために30分以上の持続が望ましいとされています。
運動を実施するタイミングは、生活の中で実施可能な時間であればいつ行っても問題ないが、特に食後1時間後に行うと食後の高血糖状態が改善されます

有酸素運動では、中等度の運動強度であれば、週に150分かそれ以上、週に3回以上、行うことが勧められています。
糖尿病患者の糖代謝の改善は運動後12~72時間持続することから、血糖値を低下改善させるため、運動をしない日を2日間以上続かないように行う必要があります。
また、歩行運動の場合、1日8,000~10,000歩を目安としましょう。

レジスタンス運動では、連続しない日程で週に2~3回の実施が勧めらています。
ただし、心疾患がある患者では高強度のレジスタンス運動の実施は勧められません。

脂質異常症の運動療法

脂質異常症とは

全国調査結果において、脂質異常症の患者は約2,200万人と推計されています。

脂質異常症の基準は、LDLコレステロール≧140mg/dL、HDLコレステロール<40mg/dL、中性脂肪≧150mg/dL、non-HDLコレステロール≧170mg/dLと定義されています。

脂質異常症の治療は、生活習慣の改善が根幹であり、薬物療法中も生活習慣の改善を行うべきとされています。
運動療法として、中強度以上の有酸素運動を中心に定期的に(毎日合計30分以上を目標に)行うことが推奨されています。

運動種目

有酸素運動を中心とした種目として、ウォーキング、速歩、水泳、エアロビクスダンス、スロージョギング(歩くような速さのジョギング)、サイクリング、ベンチステップ運動などの大きな筋をダイナミックに動かす身体活動が推奨されています。

運動強度

中強度以上の運動が推奨されています。
掃除、洗車、子どもと遊ぶ、自転車で買い物に行くなどの生活活動の中で活動量を増やすことからはじめてもよいでしょう。

運動頻度・時間

1日の合計30分以上の運動を毎日続けることが望ましいです(少なくとも週3日は実施)。

血中脂質レベルは1回の運動では影響を受けません。
そのため血中脂質レベルに好影響を与えるには数ヶ月以上の長期的な運動療法が必要となります。

HDLは「善玉コレステロール」として知られ、脂質異常症の進展を抑制する働きがあります。
HDLコレステロールを増加させることができる運動の最低条件として、1週間に合計120分間の運動を行わなければならないこともわかっています。

食事による生活習慣病改善

下記、各生活習慣病ごとに、食事療法の注意点を記載しております。

高血圧症の食事

DASH食+減塩食が効果的

  • 食塩制限(食塩6g/日未満)
  • 野菜・果物の積極的摂取
  • コレステロール・飽和脂肪酸の制限

「DASH食」;高血圧を防ぐ食事

DASH=Dietary Approaches to Stop Hypertension(高血圧を防ぐ食事方法)の略語で、アメリカで行われた調査・研究からまとめられた血圧の改善に高い効果がある食事のことです。
様々な食品を”組み合わせる”ことでより効率的に血圧を下げると考えられています。

DASH食には2つのポイントがあります。

脂肪の多い肉類や砂糖を含む甘いものを減らす

肉類から魚類に切り替えて不飽和脂肪酸を増やし、低脂肪の肉と低脂肪乳製品をとることにより飽和脂肪酸・コレステロールなどの脂肪摂取を減らすことです。

肉類は脂肪の少ない鶏肉などを選び、調理方法も皮や脂を取り除き、ゆでたり、焼いたりしましょう。
飽和脂肪酸の多い、お菓子やジュース類も減らしましょう。

野菜や海藻、果物、ナッツ類、全粒穀物を十分にとる

塩分を排出する働きのあるカリウムをはじめ、カルシウム、マグネシウムのミネラルを多く含む果物、食物繊維を多くとることで、血圧を下げる効果が期待できます。

野菜を毎食とり、ミネラルが効率よくとれる大豆製品、乳製品、バナナ、アボカド、ブロッコリー、ナッツ類、いわし、しらすなどを積極的に摂取しましょう。

糖尿病の食事

原則、食べてはいけないものはありません

高血圧症のある方は減塩が必要です。
糖尿病性腎症の方は、控えるべき食品があります。
過度な「糖質制限」は良くありません。
甘いものを食べたい時、間食ではなく食後のデザートにすると良いでしょう。

寝る前を避け、1日3食を規則正しく食べる

朝食を抜いたり、夜遅くに夕食を食べたりすると、肥満や血糖コントロール不良の原因となります。毎日決まった時間に3食きちんと食べることが、良好な血糖コントロールにつながります。

また、食事の時間がバラバラで空腹の状態が長く続くと、過食につながりやすくなります。
できるだけ一定の間隔で食べることを意識してください。

食べる順の工夫

野菜→タンパク質→炭水化物の順に食べましょう。
ポイントは、食物繊維を多く含む野菜を炭水化物よりも先に食べること。

食物繊維は消化・吸収を穏やかにしてくれるので、血糖値の急上昇を抑えることができます。

血糖値が急激に上がると、それに対応してインスリンが大量に分泌され、空腹感による過食から糖尿病を招くリスクが高まってしまいます。

バランスのよい食事

「糖尿病診療ガイドライン」では食品のバランスが定められています。

炭水化物とたんぱく質は4kcal/g、脂質は9kcal/gのため、脂ものは控えるよう心がけましょう。

食品の種類は多く摂取し、「食物繊維」は1日20g以上摂取しましょう。

適切な糖質制限を

減量などのために、糖質を極端に制限することは、その効果や安全性が証明されておらず、また長続きしにくいという点からも、現時点では勧められていません。

糖質を制限する一方で、摂取カロリー自体は大きく減らさないようにすると、結果的に脂質やタンパク質を多く食べてエネルギーを補うこととなります。

一回の献立として「ラーメンとライス」、「パスタとパン」、「うどんとおにぎり」など、炭水化物を組み合わせたメニューは、糖質過多になる恐れがあります。
ご飯のおかわりやラーメンの大盛りをする習慣も、注意が必要です。

ゆっくりよく噛んで腹八分目

時間をかけてよくかむことで満腹中枢が働き、適度な食事量で満腹感が得られます。
それにより暴飲暴食を避けることができ、肥満予防にもつながります。

エネルギー量

下記の式にあてはめ、1日に必要な適正エネルギー量を計算してみましょう。

1日の適正エネルギー量(kcal)


= 標準体重(kg) × 身体活動量(kcal/kg)

標準体重(kg)=身長(m) × 身長(m) × 22

身体活動量
軽めの労作(主婦):25~30 kcal/kg
普通の労作(立ち仕事):30~35 kcal/kg
重めの労作(力仕事):35~ kcal/kg

外食をするときは

外食は、一般的に「総エネルギー量が高い」、「塩分・糖分が多い」、「野菜・ミネラルが不足しがち」となる傾向があります。

エネルギー量や栄養成分について確認することが難しいため、普段の量より多ければ残すことや、丼物といった単品メニューではなく、品数が多い定食メニューを選ぶなどの工夫をしましょう。

外食のエネルギー量や栄養素のバランスを見分けられるように、日頃から食品の量をはかる習慣をつけておくのもよいでしょう。

脂質異常症の食事

体重を適正にする

体に溜まっている余計な脂肪を減らしましょう。
適正な体重の範囲に入るように、エネルギーの摂取を調整しましょう。

適正体重の計算(kg)


= 身長(m) × 身長(m) × BMI

年齢(才)BMI
18~4918.5~24.9
50~6420.0~24.9
65 ~21.5~24.9

コレステロールを下げる食事

コレステロール値が高い方は

卵類(鶏卵や魚卵)、内臓類(レバーやモツ)を1~2カ月食べないようにしてみて、血中コレステロール濃度が下がるようならば、コレステロール摂取量の制限が効果的なタイプと考えられます。

ある程度コレステロール値が下がったら、2~3日に1回程度は食べても大丈夫でしょう。

飽和脂肪酸を減らす

肉類の脂身や鶏肉の皮、ラード、バター、乳脂肪などには、血中コレステロールを上げる作用のある飽和脂肪酸が多く含まれます。

これらの動物性脂肪や脂身の多い肉を控え、赤身肉や脂身をとり除いた肉を食べましょう。

牛乳も低脂肪乳にするとよいでしょう。

工業的に作られたトランス脂肪酸を減らす

マーガリンやショートニングなどを使った食品や工場生産された揚げ物などに含まれています。

揚げ物類やスナック菓子、パイ菓子、クッキー類などをはじめとした市販の洋菓子類には注意しましょう。

不飽和脂肪酸を増やす

EPAやDHAといったn-3系多価不飽和脂肪酸は青魚に多く含まれます。
1日に魚を1切れ程度、食べるようにしましょう。

また、肉類・乳製品にも若干含まれますが、1日摂取量を補うことは難しいといわれています。

食物繊維を増やす

コレステロールを体外へ排泄するために、食物繊維の摂取量を増やしましょう。

食物繊維を多くとるには、主食を精白度の低い玄米、胚芽米や麦飯、全粒粉のパン、蕎麦などにし、3度の食事ごとにたっぷり2皿の野菜類・海藻・きのこ・こんにゃくなどを食べましょう。

豆類や大豆の加工品である納豆にも多く含まれています。

代表的な食品の例
飽和脂肪酸脂身の肉、生クリーム、バター、チーズ、即席めん
トランス脂肪酸菓子パン、スナック菓子(マーガリン・ショートニングに多い)
不飽和脂肪酸サバ・サンマ・ブリ・イワシなど青魚、大豆製品

中性脂肪を下げる食事

中性脂肪は肝臓で余分な糖質から合成される

これを抑えるために、炭水化物エネルギー比率を50~60%の中で設定し、果糖を含む加工食品の大量摂取を控えましょう。

過剰なアルコールは中性脂肪の合成を高める

アルコール摂取制限は短期間で効果が現れるので、まずは禁酒か節酒をしましょう。

1日に日本酒なら1合、ビールなら500mL程度、ワインなら180mL程度までにしましょう。

EPA、DHAを積極的に摂取

EPA、DHAは肝臓で中性脂肪を作りにくくするため、積極的に摂取するようにしましょう。
これらは、青魚に多く含まれます。
肉類・乳製品にも若干含まれますが、1日摂取量を補うことは難しいといわれています。